2016年12月23日

[韓国]脱“post-truth”

 “post-truth”――.オックスフォード英語辞典は毎年11月ごろに「今年の単語」(Word of the Year)を発表しており,2016年の今年の単語としてこの単語が選ばれた,ということを,日本の某ラジオ番組で偶然耳にしました.

 直訳すれば“脱真実”.その具体例として,投票当日までクリントン氏の優勢が伝えられた米大統領選で,時に自分自身の発言を反故にしたり,差別的な発言も辞さず感情に訴えて勝利したトランプ氏の例や,EUへの多額の拠出金についてのみ訴え,拠出金の一部が補助金として返還されることには言及せずに賛成票の獲得に成功したイギリスのブレグジットの例などが挙げられていました.そのように,道理よりも先立つ感情によって物事が決っていく状況から“post-truth”が今年の単語に選ばれたようです.

 米大統領選やブレグジットのように世界を揺るがすほど重大ではありませんが,信憑性のない記事が多数公開されていて問題になった日本の医療サイトの件も,ちょっと強引かもしれませんが“post-truth”の一例といえるように思えます.数年前には,教科書に掲載される寸前にまで至った“江戸しぐさ”の例などもありました.結局はどちらもそのトンデモぶりが暴かれ,“post-truth”の状態から引き返すことができたのは,日本の世論が健全な証なのかもしれません.

 このような世界の“post-truth”化の動きと逆行していると思われるのが,今年の韓国です.부정청택(不正請託)の排除を目的に制定された「キム・ヨンナン法」は,その象徴的な存在といえます.どのような行為が法に触れるのか不明確で,施行直後は混乱も見られましたが,道理よりも感情が先立つコネ社会の悪習を一掃し,クリーンな社会の実現を目指したこの法律は,韓国が今後「脱“post-truth”」化を目指す旗印となりました.

 さらにその直後,こんどはパク大統領周辺のスキャンダルが暴かれ,大統領やその側近とチェ・スンシル氏,さらには,それらの人々と政府機関や財閥とがどのような関係にあったのか,真実の解明を求める国民の声は絶頂に達しています.現在は憲法裁判所で大統領弾劾に関する審理が行われており,なるべく早く結論が下せるよう,国会で可決された弾劾決議に含まれた訴追理由を5つに集約した状態です.

 たとえ弾劾されなかったとしても,来年には韓国でも大統領選があり,「脱“post-truth”」化の動きから元の状態に引き返すことはないと思われます.来年以降,韓国社会がどのように変わっていくのか,一方,日本は世界的な“post-truth”の動きに呑み込まれずにうまく対処していけるのか,注目していきたいと思います.
posted by kajiritate webmaster at 22:58| Comment(0) | 日記