2016年09月22日

[韓国語・朝鮮語]오리발

 「겨레말큰사전 남북공동편찬사업회」(キョレマル大辞典 南北共同編纂委員会)のサイトに掲載されているコラム「남녘말 북녘말」(南のことば北のことば).今月20日に公開された最近のコラムでは,いつも面白いエピソードとともに南北のことばの差についてコラムを書かれている김완서(キム・ワンソ)責任研究員が,今回も面白いコラムを書かれています.

 その面白さをどれほど伝えられるか疑問ですが,今回公開されたコラムを全文和訳してみました.取り上げられているエピソード自体が,日本のどこかの学校でもありそうなことですので,和訳に難があっても充分面白いのではないかと思うのですが,どうでしょうか.

 『조선말대사전』には「닭잡아먹고 오리발 내놓는다」という表現が掲載されていますので,北朝鮮でも“しらを切る”の意味で『오리발』が使われている点は韓国と同じようです.


오리발 친구(김완서 겨레말대사전 책임연구원

 私が高校3年生だった1989年の中間考査期間にあったことだ.私は2組で,小学6年のときからの仲良しは4組だった.その友人は体育学科に行こうと勉強よりはスポーツの実習に熱中する日々を過ごしていた.ところが中間考査期間だったある日,試験の準備には背を向けていたその友人が,こんどの化学の試験に出る可能性が高い記述式の問題といって10問を選んたものをくれた.スポーツの実習のため勉強には力を入れていなかった友人がいきなり渡した化学の記述式問題10問は,ある問題集からそのまま抜き出したものだったので,出題される可能性はほとんど無いように思われた.そのため,私は自分の教室に帰って60名あまりのクラスメートに,こんどの中間考査に出そうな問題だといって,その友人が選んだ10問をすべて知らせてしまった.

 そして化学の試験があった日,私は問題用紙を開いて自分の目を疑わすにはいられなかった.化学の記述式問題10問のうち,その友人が予想問題だとくれたものから一字一句違わずに8問がそのまま出題されていたのだった.なんと80%にも及ぶ驚きの的中率だった.出題されたのに驚きながら,とても簡単に問題を解いた.そしてその吹き返しは,中間考査がすべて終わってから私にやってきた.文系の全6クラスのうち,唯一私のクラスだけが化学の平均点数が飛びぬけて高いという結果が出たのだった.これについて化学の問題を出題した先生は疑念を抱き,私のクラスの友人たちがあちこちに私が知らせた問題のほとんどが出たと騒ぎ立てたので,私は化学の先生から呼び出しを受けた.教務室に入るや否や,先生は私を厳しく追求しはじめた.

 「君,その問題をどうやって知った? 問題が流出したのか? ちゃんと答えろ.再試験しないといけないかもしれない深刻な問題だからちゃんと答えろ.分かったか!!!」

 私は先生の相次ぐ厳しい追求に対し,とてもシンプルに答えた.

 「4組の○○君が教えてくれたんです」
 「何だと? そいつも連れて来い,早く!!!」

 私は4組に行って仲良しを呼び出した.こういう理由でお前も来いと言っていると.その友人は顔をしかめてかなり怒ったようすで私に言った.

 「クラスのみんなに知らせたせいでこんなことまでやらしやがって」

 その友人と私は一緒に教務室に入った.化学の先生は私にしたのと同じように私の友人を追及した.だが,私の友人は堂々とこう答えた.

 「問題が流出したんじゃなくて,単にふざけて僕が持っている問題集から10問選んで彼に渡しただけです」

 先生はとても気の抜けた顔をして,ただ一言だけ言った.

 「もういい」

 完全に偶然の一致で先生と私の友人が同じ問題集から同じ問題を選んだだけだったというハプニングとして,その日の事件は一段落した.

 前に一度,北側(=北朝鮮)にだけあることばとして『딱친구』(タクチング)を紹介したことがある.この『딱친구』と同じことばがもうひとつある.『조선말대사전』(朝鮮語大辞典)には収録されていないことばだが,私たちが保有しているコーパスを検索するとその用例が出力され,北側の研究者が『딱친구』の説明をしてくれたときに私に教えてくれた話でもある.

 ‐私といま里の党秘書をしているクヮンヒョクと,この家の一番上の孫のチョンソンは{오리발 친구(オリバルチング)だが},町内で一番いたずらのひどいいたずらっ子たちだった.「チョン・チャンド:『帰郷』」

 北側の研究者は『오리발』(アヒルやカモの足,水かき)が取れているのではなくてくっついているので,いつもくっついて回る親友を『오리발 친구』といい,『딱친구』と同義語だと,私に詳しく説明してくれた.そのときは『딱친구』と『오리발 친구』は同義語だと思ったが,いま考えてみると「딱친구=오리발 친구」という公式は成立しないようだ.『딱친구』は「いつもくっついて回る親友」というよりは「お互いに心を開いている親友」という意味なので,『딱친구』と『오리발 친구』を同義語と見るのは難しそうだ.そのため,『오리발 친구』と同じ意味として使われることばは『단짝 친구』(タンチャクチング)がより合っているように思える.

 南側(=韓国)では『오리발』を「しらを切る態度を俗にいうことば」という『표준국어대사전』(標準国語大辞典)という語釈のように否定的な意味で使うのに対し,北側では『오리발 친구』のように肯定的な表現でも使用するという点から,『오리발』の使われ方に南北で差があるということが分かる.
posted by kajiritate webmaster at 22:14| Comment(0) | 日記